二、

16/59
前へ
/218ページ
次へ
 でも。答えはしたものの。  ーーこういう時どっちに乗るべきなんだろう。  一瞬足が止まった。  当然だけど学園の生徒は誰も免許なんて持っていない。学園で車に乗る時は寮の高級車で複数人一緒、運転手付き。迷う事なく後部座席だ。  だけど今日は二人きりで、運転してくれるのは従兄弟。どこに乗るのが正解なんだろう。  助手席の扉と後部座席の扉を見比べて、考えてもわからない時はいつもの場所だと思った。すぐに後ろの扉に手を伸ばす。  その時だ。 「助手席」  ただそれだけ声をかけられた。だけど城之内はこちらを見る事もなくさっさと運転席に乗り込んでしまう。 「やっぱり……」  ちょっと康介と似てる。思ったけれどすんでのところで飲み込んで、後に続いた。  歩くとあれだけ長く感じた道も、車だとあっという間だ。一面の白い壁に天井を覆い尽くすライト。普段密閉されている空間だからこそ汚れなんかも全くない。ひたすらに変わらない光景を十分、二十分見続けただろうか。  まず視界に入ったのは大型バスだった。姫と康介の家から少し離れた場所に乗り捨てたと聞いていたのに元の場所に戻っている。そしてその直後。 「着いたよ」 「はい」  車は懐かしいアーチ型の階段の前で停まった。  無言で車を降りて階段を上がる。 「アラームは切ってある」 「はい」  扉を開ける手は僅かに震えた。  扉の向こうはもう半年ぶりのネデナ学園だ。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

446人が本棚に入れています
本棚に追加