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家のキッチンに戻って、清澄先輩特製の電子辞書型パソコンを繋げてみせた。
「それ、どうしたんだ」
「慧が持ってきてくれたんです」
「は? どこに、どうやって⁉︎」
「屋敷に、ここから地下道を歩いて、です」
「……どうなってるんだよ、先端技術科は」
驚く城之内先輩には顔を上げる事なく言葉を返して、目は現れた文字列を追った。
まずはセキュリティ。ネットワークへの侵入がバレないように、学園内の端末からのアクセスを見逃すよう切り替える。それが終わったら次は監視カメラ。城之内先輩が言った通りこの家と地下通路のカメラは切れているけれど、これだとすぐにバレる。
「その技術、どこで習った」
「寮で先輩達に」
カメラの電源は元に戻して、念のため数時間前の切り取った映像を貼り付けた。これで不自然な空白の時間はある程度カバーできる筈だ。
「何してる?」
「下の監視カメラを切り替えました」
そう返事をしながら今度はメインのコンピュータへの侵入を試みる。すると、何十というファイルが現れた。
試しに一つ目のパスワードを解読して開けてみると、それは生徒情報のファイルだった。
【父:田山信弘 株式会社アームリース経営。資本金百万円、従業員数五名。当期純利益は二百万円の赤字。メインバンク融資残額二千万円】
【容姿80。学力は若干劣るもののAランク候補かつ将来の幹部候補として入学価値があると考える】
【面談拒絶金として金一千万円支払い済み】
入学書類には絶対書いていないであろう親の情報から、入学前に生徒を判別した痕跡、終いには家族との面談や手紙がなくなった目を疑いたくなる原因まで。一つ目のファイルでこの内容だ。
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