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もう立ったままだと受け止められない。尻餅をつきながら抱き止める。
「ただいまー! 待たせてごめんね、寂しかったよね」
屋敷では音を気にしてたくさん褒める事も出来なかったから、ここぞとばかりに撫で回した。
「毛並みもふわふわ! ブラッシングしてもらってて良かった」
ジスランは親バカではなく本当に賢いと思う。やっぱり屋敷では我慢してくれていたようで、今日は比べ物にならない力で離れまいと体を擦り寄せ、顔中を舐め回そうとしてくる。
「わかった、わかったって!」
ジスランが落ち着いてくれるまで、だいぶ時間を要した。
一通り戯れると、扉を開け放したままだった自分の部屋に足を踏み入れた。半年もいなかったのに何も変わってない。ソファーも、ベッドも、机も、床に散らばるジスランの玩具まで何もかもそのままだ。たまに掃除をしてくれていたなんてレベルじゃない。それが堪らなく嬉しい。
「誰が掃除とかしてくれてたの……?」
皆の顔を思い浮かべながら尋ねると、ジスランははち切れそうな程に尻尾を振りながら一つ吠えて返した。
そのままクローゼットルームに入った。姫のお下がりの鏡台の上には華に貰ったジュエリーケース。それを開けると、ネックレスはあの日置いて出た時のままそこにあった。
恋人になる前、おおっぴらに会えない中で慧が人目を盗んで用意してくれたこのネックレス。しかもただのダイヤモンドネックレスではなくて、大事にしているブレスレットと同じ犬の足跡型のチャームが付いている。
慧はそのチャームを犬が好きだから気に入っているんだと思っているみたいだけど全然違う。女嫌いだった慧が、私が見ていた物を覚えていてくれたのが嬉しかったからここまでお気に入りになったんだ。
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