二、

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 ネックレスとブレスレットをつけて鏡の前に立った。  最初にこの鏡に自分の姿を映した時は十二歳だった。それがもうすぐ二十歳。憧れていた、自分とはかけ離れた存在だったあの時の姫達の年齢を越えてしまった。鏡に映る姿はだいぶ大人っぽくなったけど、少しは姫達に近づけただろうか。  一つ大きく息を吸って、そして吐き出した。 「よし!」  これで元気は補充した。本当はまだ部屋にいたいしバルコニーにも行きたいけれど、やらないといけない事がたくさんある。もうひと頑張りだ。 「ジスラン、おいで」  使い慣れたパソコンを手に取り、ジスランを連れて一階に戻った。  城之内は呆れたような何とも言えない表情をしていたけれど、それはこの際無視させてもらう。談話室に案内して二つのパソコンを立ち上げる。 「ここでやる気か?」 「はい」 「あとニ時間もすれば生徒が戻って来る」 「ですね」 「報告されたら」 「そんな事する子はいないので大丈夫です」  それだけは断言できる。大きく息を吐いて画面に向き直った。  暫くはキーボードの音だけが談話室を支配した。城之内は何も言わずにパソコンを見つめ、ジスランはいい子に足元に伏せている。  数十のファイルを一つ一つ開けるのは時間がかかったけれど、出てくるのは驚くようなものばかり。
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