二、

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「ごめんね」 「何であなたが謝るんですか」 「何でも。でも絶対にどんな形であれ笑って楽しく暮らせるようにするから」 「だから何で……」  その時だ。また談話室の扉が開いた。 「玄関の誰ー? 一応置いてきましたけ、ど……」  ひょっこり顔を見せたのは眞子だ。目が合った瞬間、みるみるうちに目に涙が溜まっていく。静かに、のポーズをしてから手招きすると、次の瞬間には少し乱暴に扉を閉めながらすごい勢いで飛びついてきた。 「さき、せんぱっ!」 「ただいま」 「咲希せんぱっ……咲希先輩ぃっ……」  静かにを律儀に守ってくれているのだろう。眞子は声をあげて泣き出したいのを堪えて、消え入りそうな声でただ名前を繰り返す。そんな姿が可愛くて、抱き締める力を強める。 「ごめんね、もう声出して大丈夫」 「良かった、会いたかった! 心配したんですからっ! もうどこにも行かないでくださいっ!」 「うん、ごめんね」  もう一度謝ると離しませんとばかりにワンピースを掴まれて、思わず顔が綻んだ。  そこでまた扉が動いた。恐る恐るという風にゆっくり開いたかと思えば。 「嘘っ」  入口で立ち尽くしたのは歌だ。  お・い・で。眞子を抱き留めたまま口パクで伝えて片手を広げると、歌はふらふらと寄ってくる。そして一歩手前で止まった。 「……先輩」 「うん」 「ごめんなさいっ……」  出てきた言葉はそれだけだった。大粒の涙を溢す歌を眞子ごと抱き締める。 「謝らなくていいの。ただいま」  囁けば、歌は崩れるように咲希の胸元に顔を埋めた。
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