二、

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 その後も騒ぎは続いた。次に帰ってきた宏太は咲希の姿を認識するなり無言でガッツポーズを決めたし、順は足をもつれさせて盛大にずっこけた。京子と佳那は口を開く前に咲希の下に飛び込んできて、眞子と歌まで巻き込んでおしくらまんじゅう状態になった。  そして哲平は扉を閉めるなり叫んだ。 「慧先輩達呼んできますっ!」 「あ、俺も行きます! 生徒会室にはいない筈!」 「よし、ショップ街手分けして探すぞ!」 「俺も!」  それだけ言うなり宏太と順を引き連れて慌しく飛び出していく。再会を喜ぶ暇もない。  泣くわ騒ぐわ走り出すわの先輩達に1年生達は目を白黒させたけど、事情を話すと納得してくれた。 「あなたが咲希先輩だったんですね」 「副寮長で慧先輩の彼女さんで伝説の人だって」 「馬鹿っ!」 「え、何? 伝説って」 「咲希先輩は知らない方がいいですよー」  耳を疑う言葉もあったけど、眞子が泣き笑いで誤魔化してそれに皆で笑った。  それからは寮生達が雪崩のように帰ってきた。 「咲希先輩!」 「あ、湊」  走って出て行った三人が教えて回っているらしく。皆少し声を潜めながら、でも勢いは殺す事なく部屋に飛び込んでくる。 「ほんとに咲希先輩がいるーっ!」 「今哲平先輩達に会って! あ、携帯は玄関にちゃんと置いてきましたっ!」 「咲希先輩っ!」 「本当にいるっ! おかえりなさい!」  あっという間に談話室の人口密度が上がり、同時に笑顔が増えていく。そしてついに。
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