二、

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「咲希っ!」  会いたかった四人も帰ってきた。その途端、談話室から音が消えた。 「咲希……」  どこから走ってきてくれたんだろう。華の息は切れている。 「お前なあ……突っ走ってくのやめろよ! 次から首輪つけさせて慧に持たせるからな!」  博は怒ってみせているけど、心配してくれていたのは見え見えで。 「ほんとに無事で良かった……」  謙太は溢しながら、顔をくしゃりと歪めた。  そして。 「おかえり」  慧から発せられたのはたった一言だけだった。でも、それが全て。 「ただいま」  目頭が熱くなる。後輩達の前で泣きたくないのに。  でも、差し出された手に手を重ねれば引き寄せられてあっという間に囲まれる。  乱暴に。強く。優しく。  褒めるように。労るように。  肩に。頭に。  四方から伸ばされた手に抗う事はできなかった。 「ただいまっ」  もう一度発した言葉は震え、大粒の涙が溢れ落ちる。 「咲希。おかえり」 「おかえり」 「おかえりなさい!」 「おかえり、お疲れ」  四方から。 「咲希先輩、おかえりなさい!」 「良かった……おかえりなさいっ!」 「おかえりなさい!」 「おかえりなさい、会いたかった!」  そして談話室中から返ってきた声が嬉しくて、泣きながら笑ってしまった。
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