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涙は暫く経ってからようやく止まった。まだ少し手が震えているけれど、のんびりもしていられない。
「ありがと、もう大丈夫」
ハンカチ、ハンカチ。自然とポケットに手を伸ばすと、出てきたのは慧から贈られた白いハンカチだった。
「あ、それ……」
「そ。皆とお揃いのやつ。お守りなの」
敢えて慧の方は見ない。照れ臭くて頰に熱が集まるけれど、改めて本当に戻って来れたんだと実感した。
「それで、これからどうするんだ?」
切り出したのは博だ。
「この後ちょっと校舎に行きたいの」
「校舎?」
「え、流石にバレない? 大丈夫なの?」
「咲希、携帯置いてこさせるって事はここにいる事バレたくないんだよね?」
「バレたくはないけど、それ以上に探さなきゃいけない物があるの。説明する時間はないから後で説明するから」
涙を拭いながら答えれば、返ってくるのは戸惑いの声。だけど慧は真っ直ぐにこちらを見た。
「必要なんだな?」
「うん」
「わかった」
しっかりと頷くと、了承が返ってくる。そして周りを見回した。
「この時間に監視カメラいじるのはバレる可能性が高い。カメラは合間を掻い潜って、人の目は俺らが周りを囲んで遮ろう」
そこに一つの声が割り込んだ。
「いくら周りを囲んでも、そんな真っ白いワンピースじゃ見つけてくれって言ってるようなものだろ」
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