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バッ。そんな音でも聞こえそうなくらい皆が一斉に入口を振り返る。だけど城之内はそんな事気にも留めずに。
「あったぞ」
咲希を見て言い捨てた。
「何で城之内先生が……」
「あの、これは」
その上状況が把握できない寮生達が取り繕おうとするのを片手で制して、遠慮なく中に入ってくる。
「で、次は何だって?」
「一部のファイルが校舎のある一定の場所のネットワークからしか入れないみたいなんです」
「どこ」
「ここです」
「ああ、生徒会室の奥の生徒立入禁止区域に理事長室がある。そこだな」
当然のように咲希と話をする姿に、皆一様に固まった。恐る恐る口を挟んだのは普通科の後輩である華だ。
「あの、城之内先輩、何で……」
「利害の一致だよ」
「つまり私達の味方って事ですか?」
「…………まあな」
「城之内先輩に連れて帰ってもらったの。今の状態を終わらせるのに協力してくれるって」
多くを語ろうとしない城之内の代わりに付け加えれば、談話室内はざわついた。
それはそうかもしれない。率先して低ランクを差別していた怖い元普通科寮長で現教師、そして城之内グループ子息とくれば味方だから信じろと言う方が難しい。だけど。
「信じていいんですよね? 従兄弟なんでしょう?」
場は慧の一言で再び静まり返った。城之内は慧を一瞥すると事も無げに言い返す。
「そっちはわざわざあの距離を歩いて来たそうで。流石は彼氏様だな」
それは肯定と同じ。
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