二、

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「え、従兄弟……?」 「誰が誰の……?」  今度は皆見てわかる程に混乱した。 「城之内先輩と私、従兄弟同士だったの」  そんな場合じゃないとわかっていても面白くなってきてしまって、思わず笑ってしまう。華と博が仲良く口を開いて乾いた息を漏らした。 「は……?」 「嘘だろ……城之内先輩は城之内グループの人なんだろ?」 「うん。母の旧姓も城之内だったみたい」  答えれば、もう一度「嘘だろ」が返ってくる。 「そしたら咲希もお嬢だって事じゃないか」 「まあ今回の件で知るまで一度も関わりなかったし、これからも私がお嬢様なわけじゃないから。でも血の繋がった従兄弟だっていうのは本当」 「まじか……」  こんな砕けた言い方、博らしくない。それだけ混乱しているらしい。  博、謙太、華、京子、佳那、哲平、眞子、宏太。仲が良かったり年が近かったりする人程驚いていて、それがおかしくて少しの緊張も吹き飛んだ。 「それでどうするんだ?」 「校舎に行って、城之内先輩が言う理事長室に行きます。そこからしかアクセスできないって事はそれだけ大切な物が隠されてるんだと思うので」  城之内に返す言葉も自然と軽くなる。だけど城之内は再び咲希の姿を上から下までざっと眺めた。 「そうか。でも着替えてからにしたらどうだ」 「え?」 「すごい事になってるぞ」  言われて自分の服を見下ろすと、確かにすごい事になっていた。 「あ……」  まずは至る所に水でできたようなシミ。多分涙だろう。そして肩口や胸元にはファンデーションやマスカラで出来たのだろうシミが点在している。真っ白なワンピースだけに余計に目立つ。 「あ、咲希先輩ごめんなさーい」  眞子が申し訳無さそうに呟いて、場はどっと沸きたった。
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