二、

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 流石にこの格好で外に出るのは憚られて、ジスランを連れて部屋に戻った。この七年間で一番着た制服に袖を通す。目立つわけにはいかないから、ブラウスも靴下も学校指定のもの。乱れた髪は再び紺のリボンのヘアゴムで結び直して、一樹のペンダントも再びポケットに入れた。 「よし。ジスラン、行ってくるね」  声をかけて一撫ですると、ジスランは行かせまいと体を擦り寄せる。その仕草が可愛くて思い切り抱き締めた。 「今度はすぐ帰って来るから」  ジスランだけじゃない。一階で待っている皆も、弟妹も、他の家族も。もう二度と置いて行きたくないし、離れたくない。誓いを込めて自分にも言い聞かせる。 「行ってきます」  ジスランは今度は大人しく行かせてくれた。  一階へ降りると、玄関の前で慧と博、謙太、華と宏太が待ち構えていた。談話室へと続く廊下には他の全寮生の姿。 「行くぞ」 「うん」  慧の言葉に頷けば、後ろからたくさんの声がかかる。 「気をつけてくださいね!」 「絶対帰ってきてください!」 「全員ですからね!」 「お帰りなさいパーティーするんですからっ!」  自然と口角が上がった。 「うん、すぐ帰って来るから! 行ってくるね!」  いってらっしゃいの大合唱に見送られて寮を出た。
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