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「城之内先輩は先に行って鍵開けといてくれるって」
「わかった」
頷きながら見慣れた、だけど懐かしい道のりを足早に進む。
一応五人が庇うように周りを囲んでくれてはいるけれど、授業が終わって一時間。帰宅ラッシュは一服している時間だからか通学路上に人気はない。賑やかなショップ街を横目に見ながら監視カメラを避けて歩き、二本の大木が植えられた丘を越えるとその先に校舎が現れる。
見上げた校舎はやっぱり荘厳だ。
「なつかし……」
「だろうな」
思わず呟くと、呆れたような返事が返ってきた。そのジト目はそんな場合じゃないだろと告げている。
「わかってるって」
小さな声で答えて背筋を伸ばし、校舎に向き直る。
「校舎内で監視カメラを避けて歩くのは無理だろ。どうする?」
尋ねたのは博だ。その言葉に慧と再び顔を見合わせる。そして同時に口を開いた。
「突っ走ろう」
監視カメラをいじれない、そして避ける事もできないなら選択肢はそれだけだ。
すると、四方から息を吐き出すような音が同時に聞こえてきた。
「りょーかい」
「校舎を全力疾走なんて初めてだよ」
「井丹先輩は大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫ー! 私運動神経まあまあいいから!」
四人の言葉に自然と口角が上がる。
「行くぞ」
慧の言葉を合図に一斉に走り出した。
生徒会室は一番上の階の一番奥だ。校舎に階段は二箇所。でも、奥の階段を使うには職員室の前を通らなければならない。だから必然的に、校舎に入ってすぐの階段を駆け上がる事になる。
前までならこんなの余裕だった。だけど半年間走ってもなければ泳いでもいない体には、階段ダッシュはきついらしい。
「大丈夫か⁉︎」
「んっ!」
まともな返事も辛いくらい胃が掴まれたようにぎゅっと痛む。
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