二、

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 それでも遅れまいと食らいついて、何とか階段を上りきった。その先にあるのは高ランクの拠り所であるラウンジだ。  ーーまずい。  思った時には遅かった。 「え、結坂さん⁉︎」 「何で!」  ちょうど入り口から出てきたのは懐かしいクラスメイト二人だった。しかも普通科と体育科のAランク。二人の声に釣られるように、更にラウンジの奥から生徒達が顔を出す。 「結坂先輩だ!」 「え、何でここに⁉︎」  騒ぎになるのは明白だ。 「急ぐぞ!」  何も答えずに一斉に走り出す。こんな時ばかりは広く豪華な施設が恨めしい。長い廊下を抜け、角を曲がり、生徒会室を抜け、生徒立ち入り禁止と書かれた扉の更に先にそれはあった。 「こっちだ」  扉を開けて顔を出す城之内に迎え入れられる形で理事長室に雪崩れ込む。全員が入りきると城之内が即座に鍵をかけた。 「バレたのか?」 「先生には見つからなかったんですけどっ」 「クラスメイトに……あいつら絶対騒ぐわよ」  答えようとするけれど、華と二人、否が応でも息が上がってしまう。対して男性陣はほとんど呼吸を乱す事なく平然と立っていた。  少しだけ羨ましく思いながら、どうにか呼吸を落ち着けて部屋を見回した。  目の前には低い机とソファーという応接セットがあり、奥には木製の机と事務椅子。理事長室というだけあって、小学校の時に見た校長室と同じような作りだ。ただし、そのレベルが全然違う。家具はどれも高そうなものだし、頭上に輝くのはシャンデリア。骨董品らしき壺と大きな油絵まで飾られている。
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