二、

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 今の国は祖父の理想とかけ離れている。若者に向上心はなく、技術力もテクノロジー化もどんどん他国に抜かれていく。数十年前のような著しい成長力はどこにもないし、今まで意のままだった政財界にも言う通りに動かない人間が増えた。このままでは国はダメになる、そう言っているのに誰も動こうとしない。  だから理想の国を作るためにこの学園を作った。この学園で優秀な生徒を育て、豊かな暮らしに慣れさせる事で向上心を持たせる。優秀な生徒をコネで官公庁や大企業に送り込めば、その生徒は生涯逆らえない。  将来はこの辺り一帯の土地を買い取り、膨大な資金と送り込んだ生徒達を使って国からの独立する。広い土地に最新鋭の施設、恵まれた生活。ここに慣れた生徒達はここにいる事を望むだろう。  高ランクは新しい国の幹部。優秀で向上心があり、そして自分の言う通りに動く人間が国を動かせば、国が悪くなるわけがない。低ランクはその下で暮らす一般人。身の程を弁え、高ランクが決めた通りに動けばいい。  そして、その国のトップに立つのが祖父であり、ゆくゆくは咲希だ。  間違えた母親から離し、ここで最高の教育を受けさせ、上に立つ事を覚えさせる。豊かな生活に慣れさせ、『間違った』選択をしないように導いて育てる。そうすれば立派な党首となる。  祖父は本気でそう記していた。 「……神にでもなる気か」  最後まで読んで、城之内は憎々しげに呟いた。
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