二、

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「咲希」 「うん」  これも同時だ。作業は慧に任せて体を起こし、真っ直ぐ扉の前へ移動した。軽く息を吸い込んで声を張り上げる。 「何言ってるんですか?」  前は震えていた声も今はしっかりと出る。それだけ腹が立ってる。 「何を言ってるんだお前はっ」 「結坂咲希です」  冷静にゆっくり名乗ると、扉の向こうがようやく静かになった。 「皆さん自分の立場をわかってますか?」 「何がっ」 「城之内の次のトップ、誰になるんでしょうね?」  その瞬間、冷や水を打ったかのようにその場から音が一切なくなった。そこに畳み掛ける。 「私達を捕まえたら一時的には評価されると思います。でも、トップが交代したらどうなるでしょうね。……少なくとも私なら自分を苦しめた人を重用なんかしないし、一緒に働きたくもないですけど」  これは脅しだ。 「それは……」 「あ、それどころか同じ苗字の人すら会いたくないかも」 「何をする気ですか⁉︎」 「やめてくださいっ」  扉の向こうの動揺がこちらにまで伝わってくる。でも姫なら、Sランクの先輩達なら、こういう時絶対に容赦しない。相手が反抗する気も起きなくなるくらい潰し尽くす。 「皆さんの選択次第だと思うんですけど、さあ、どうします?」  選択肢なんて与えない。  扉の向こうから答えが返ってくる事はなかった。
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