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「咲希」
「うん」
これも同時だ。作業は慧に任せて体を起こし、真っ直ぐ扉の前へ移動した。軽く息を吸い込んで声を張り上げる。
「何言ってるんですか?」
前は震えていた声も今はしっかりと出る。それだけ腹が立ってる。
「何を言ってるんだお前はっ」
「結坂咲希です」
冷静にゆっくり名乗ると、扉の向こうがようやく静かになった。
「皆さん自分の立場をわかってますか?」
「何がっ」
「城之内の次のトップ、誰になるんでしょうね?」
その瞬間、冷や水を打ったかのようにその場から音が一切なくなった。そこに畳み掛ける。
「私達を捕まえたら一時的には評価されると思います。でも、トップが交代したらどうなるでしょうね。……少なくとも私なら自分を苦しめた人を重用なんかしないし、一緒に働きたくもないですけど」
これは脅しだ。
「それは……」
「あ、それどころか同じ苗字の人すら会いたくないかも」
「何をする気ですか⁉︎」
「やめてくださいっ」
扉の向こうの動揺がこちらにまで伝わってくる。でも姫なら、Sランクの先輩達なら、こういう時絶対に容赦しない。相手が反抗する気も起きなくなるくらい潰し尽くす。
「皆さんの選択次第だと思うんですけど、さあ、どうします?」
選択肢なんて与えない。
扉の向こうから答えが返ってくる事はなかった。
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