二、

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「お前っ、お前なあ! まじでお前っ!」  言葉も出ないらしく同じ言葉を繰り返す様子に、それだけ心配をかけてしまったんだと実感する。自然と足が止まった。 「ごめんって」 「何やってんだよ! 何年も出てこれないとか一生出られないとか色々言われてたんだからな! 心菜もすげえ心配してたんだからなっ!」 「心菜も⁉︎」 「当たり前だろっ!」  思わず叫べば、それ以上に大きな声が返ってくる。 「咲希連れてかれた後、べそかいて泣いてたんだからな!」 「そっか……」  まさか心菜が泣く程心配してくれていたなんて。長く見ていない妹の顔を思い浮かべると、感じていた怒りが和らいだ。  でも、せっかくこちらが浸っているのに、そっとしておいてくれないのがこの学園の高ランクだ。 「結坂さん! 今までどこにいたの⁉︎」 「大丈夫だった? 心配してたんだ!」 「結坂先輩!」  聞いてくるだけならまだいい。 「今何があったの⁉︎」 「生徒会長に戻るんですよね⁉︎」 「結坂なんて放っておいてさ! Cランクだろ⁉︎」 「ちょっ」  尚人を押しのけて目立とうと、前に出ようとしてくる。咲希が一言言おうと口を開きかけたところで。 「五月蝿い」  一喝したのは城之内だった。叫んだわけでもないのにその声は響き渡り、場はしんと静まり返る。 「お前らさ、俺達が歩いてるのわからない? そんなに全員反省したいのか?」  それに答える人はいなかった。 「なら黙ってここで立ってろよ。追いかけて来たら……ただじゃ済まさないからな」  この学園で嫌という程権力を持つ城之内に、逆らえるわけがない。誰もがピクリとも動かなくなった事を確認すると、城之内はこちらを振り返った。
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