二、

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「そいつ、連れて来たら」  それきりまた歩き出してしまう。多分速さは緩めてくれない。 「え、俺も⁉︎ 行っていいのか⁉︎」 「歩きながら説明するから」  混乱する尚人にそれだけ伝えて後に続くと、一瞬迷った素振りを見せながらも駆けてついて来た。  今までいた場所。祖父の事。一樹の事。まどかお姉さんと城之内先輩の事。この学園が作られた本当の意味。  歩きながら掻い摘んで話すと、その度に「は⁉︎」とか「え⁉︎」とか「嘘だろ⁉︎」とか「はぁっ⁉︎」なんてすごい反応が返ってくる。 「え、じゃあ一樹は従兄弟で城之内先輩も従兄弟⁉︎ 嘘だろっ」 「本当なんだって」 「蘭沢先輩には一樹の赤ちゃんがいて⁉︎」 「うん」 「しかも祖父さんがすごい金持ちでこの学園の理事長⁉︎ 国を作って咲希を跡取りにしようとしてる⁉︎ 何だそれ!」 「驚かないでって最初に言ったじゃん!」 「無理だろっ! 頭ついてかないんだけど!」  尚人は叫ぶように言って頭を掻きむしった。興奮からか顔は赤く染まっているし、何度も足を止めかけた。でも城之内先輩が止まらないから、必死で足を動かしてついて来ているのが伝わってくる。 「……それで、これからどうするんだよ」 「それは……」  どうしよう。迷って慧の顔を伺ったところで、ちょうど校舎の玄関。前を歩く城之内先輩がピタリと立ち止まった。
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