450人が本棚に入れています
本棚に追加
そして。
「ちょっ」
踵を返し、部屋を出て行こうとする。
「待ってください!」
呼び止めても何も言わない。止まってくれる気はなさそうだ。
それなら、これなら。そう思って叫んだ。
「最後に一つだけ! さっき言ってたの、本当ですか⁉︎」
「……何が」
「さっき……本当なら私ランク落ちしてたって……」
城之内の足は一度ピタリと止まった。
「君のお祖父さんは孫娘のうち君だけが可愛くて仕方ないみたいだからね」
それが答え。
「あ……」
それ以上何かを言う前に城之内は出て行ってしまった。扉の電子ロックが閉まる音だけが虚しく響く。
ーーあれだけ努力したのに。
ーー何で、どうして。
悔しさと、他の生徒への申し訳なさが込み上げてくる。
全身の力が抜けて、涙が勝手に溢れた。
その涙は次の講師が扉を開けるまで止まる事はなかった。
城之内が零した情報は全て本当の事らしかった。
確信したのは次の日の事。
「やあ」
二度と会いたくなかった人が昼食を持って来た。
最後に見たのは三年以上前。高そうなスーツと一樹のものによく似た眼鏡。傍目にはいい人そうに見えるけど、やった事は最低だった。
「……真瀬先輩」
「一樹様に任されてね、様子を見に来たんだ」
一樹に心酔し、由羅を利用した真瀬宙がのうのうとやって来た。
最初のコメントを投稿しよう!