二、

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「後ろを見てなんてない。咲希を幸せにするためだけに頑張ってきたんだ! たくさん我慢してきた咲希にもう惨めな思いをさせたくないから城之内のトップにだってなった。咲希のためになったんだよ?」 「……違うでしょ。自分のため」 「咲希!」 「一樹は本当は私の事なんて少しも考えてないよ。もし私の事を考えてるなら手紙もくれたし面会にだって来てくれた。将来だって私のやりたい事を応援してくれる筈! お金や権力はただ家族を見返したいだけ! 私を側に置きたいのは自分を一番に考えてくれる人が欲しいから! 全部自分勝手! 一樹がそうである限り、絶対昔みたいにしたいに一樹に笑いかけたり慕ったりしないから!」  ーー言ってしまった。  後悔はないし、ぶちまけたのは心の底からの本心だ。だけど言い切ってからほんの少しだけ恐くなる。  一樹を傷つけたかもしれない。もう元のような兄妹に戻れないかもしれない。  思わず一度目を瞑ってから、覚悟を決めて再び開く。  一樹の表情は無に近かった。  それに追い討ちをかけたのは城之内だった。 「あーあ、大切にしてたお姫様に全部見抜かれて、無様なもんだな」 「ちょっ」  まるで嘲笑うかのような言い方に、一言言いたくなる。でも慧に強く手を握られて止められた。 「……何が言いたい。跡取りの座を奪われた腹いせか?」 「そうだな。お前に奪われたなら嫌がらせの一つでもしてやりたいところだけど、今は哀れなお前を慰めてすらやりたい気分だよ」 「何?」
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