二、

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 尚人は驚いたようにこちらを振り返ったけれど、一樹は何も言わなかった。感情の読めない表情で、ただ真っ直ぐこちらを見ている。空いている方の手を強く握り締める。 「このネックレスもらった時、本当に嬉しかったんだよ? 小学校に行ってる間は宝箱に入れて、家にいる間はいつも眺めてた。でも今はつけたくない!」  ネックレスを突きつけても、まだ何も返ってこない。そうなれば。 「ねえ、秀樹先輩」  咲希が静かに呼びかけると、一樹だけでなく城之内までもが僅かに身じろいだ。だけど流石は元Sランク。すぐにわかってくれる。 「……秀樹でいいよ。従兄弟なんだろ?」 「じゃあ秀樹お兄さん。一樹、入学してからどんなジュエルもらってた? 何か特別な物あった?」 「……こいつ、出来が良くて一発目でダイヤモンドもらってたな」  その言葉でやっと確信できた。 「一樹。この鳥籠、中がキラキラしてるなってずっと思ってたの。入学してからは大きさからしてもしかしたらって。……ここに入ってるの、一樹がもらった初めてのジュエルだよね?」  尋ねても、やっぱり返事はない。でも間違ってない。 「初めてのジュエルを私にくれたんだよね⁉︎」  もう一度尋ねると、今度は静かに目を閉じた。  誰も物音一つ立てないものだから、ただでさえ大理石のせいで冷え切った廊下が更に居心地悪い物になった。  ーーどうしよう。  勉強ができて、小学校のテストはいつも満点だった一樹。よくカタカナや算数を教えてもらっていたし、満点ばかりの兄を尊敬していた。でも今、生まれて初めて馬鹿だと思う。
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