二、

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「何してるの……?」  初めてのジュエルでダイヤモンドなんて聞いた事ない。ダイヤモンドってだけでも貴重なのに、1年生のうちにそれを校外の妹にポンと送ってしまって。 「幼稚園児の妹にそんな高い物贈らないでよ。失くしたらどうするの……」  それだけ優しいのに、嫌われるような事ばかりして。 「こんな風に金属で覆われたら気づかないよ」  そして今だって何も言わない。  どうしようもなく腹が立った。  前はネデナ学園を鳥籠みたいだと思ったけれど、違う。一樹は卒業してからもずっと囚われ続けている。 「……わかった。私が継ぐ」 「はあっ⁉︎」  静かに告げると、尚人が信じられないとばかりに叫んだ。 「一樹がこのまま何も言わないならいい、私が城之内家だろうが城之内グループだろうが全部継ぐ!」  全員の視線が穴が開くんじゃないかという程集まっているのを感じる。 「今のままいい子にしてればお祖父さんは私に継がせたいんでしょ? いいよ、継ぐから」  とりわけ従兄弟の視線が痛いけれど、今は無視させてもらう。 「継いじゃえばこっちのものだもん。お祖父さんの言う事を聞くふりしておいて、継いだ後は好きにさせてもらう。慧と結婚するし、他の兄弟とは好きに会う。まどかお姉さんと赤ちゃんは私が責任持って面倒を見て、お父さんの代わりだってする。それで一樹には会わせない! 黙ってるって事はそれでいいんでしょ?」  これで何も言わないなら、本当にそうしてしまうのも手。  本気でそう思った。
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