二、

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 その言葉で再び顔を見合わせあった。  だけど、結論が出るまでに時間はかからなかった。謙太と頷き合った博が背中を押してくれる。 「行って来い」 「こっちは私達に任せて」  華もいつもの強気な笑みを浮かべて拳を握ってみせる。  三人にならお願いできる。隣を見れば、慧も一つ頷いた。 「よし、頼んだ。博、謙太、俺の部屋のパソコン繋いでおいてくれ」 「了解」 「パスワードは変わってないよね?」 「ああ」  こっちは決まった。残るは一人。 「尚人はどうする?」  振り返ると、尚人は珍しく珍しく真っ直ぐこちらの目を見た。 「俺も行く」 「うん」  そう言ってくれると信じてた。  これで一樹達を入れて五人。 「行こう」  踵を返して一歩踏み出した、その時だった。 「どこ行くの!」  一つの声に呼び止められた。切羽詰まったような叫び声に慌てて振り返ると、心菜が物陰から顔を出す。 「心菜、どうやってここに⁉」 「お姉ちゃんがいるって聞いて学校に行こうとしたらちょうどここに入っていくのが見えて、ドアが閉まる前に入ったの。全然気づかないんだもん」  拗ねたように唇を尖らせる姿は前と全然変わらない。だけど半年会わない間に随分大人びて綺麗になった。フリルのついた可愛らしい洋服を着ていても、もう立派なお姉さんだ。 「ねえ、どこに行くの?」  何と言おうか悩んでいる間に、心菜がもう一度尋ねた。
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