二、

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「聞いてたんだろ? 俺達、俺達のじいちゃんだって人のところに行って」 「尚人には聞いてないもん! お姉ちゃんに聞いてるの!」 「おい……」  尚人が答えてくれるのも遮って、こちらを睨みつける。その目が潤んでいるのはきっと気のせいじゃない。 「尚人が言った通りだよ。お祖父さんの所に行って計画を止める。行き過ぎた校則とか反省棟とか、全部終わりにしてくるね」  思えば心菜と会うのは半年ぶりだけど、その前だってまともな会話は長い事していなかった。こんなに穏やかに話すのはどれくらいぶりだろう。 「何でお姉ちゃんが行くの」 「知っちゃったからには行かなきゃ。それに私達のお祖父さんなんだよ?」 「……一樹とか康介に任せたらいいじゃん。お姉ちゃんだってまだ学生なんだからさ」  それはまるで行かないでと言っているようなもの。こちらを睨みつける姿すら可愛くて、こんな時なのに頬が緩む。 「でも行かないと。わかってるでしょ?」  ね? 語りかけると、心菜は床に視線を落とした。 「……また置いて行くんだ」  外見はお姉さんになったのに、その拗ね方はお留守番を嫌がる子供みたいだ。  ずっと気付かなかった。ようやく気付いた。  心菜はずっと変わってない。  我儘で我慢が嫌いで自分が一番じゃないといられない。  でも本当は誰より甘えん坊で、ただ構ってほしい、可愛いと言ってほしいだけなんだ。それは小さな頃から変わらない。  
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