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「聞いてたんだろ? 俺達、俺達のじいちゃんだって人のところに行って」
「尚人には聞いてないもん! お姉ちゃんに聞いてるの!」
「おい……」
尚人が答えてくれるのも遮って、こちらを睨みつける。その目が潤んでいるのはきっと気のせいじゃない。
「尚人が言った通りだよ。お祖父さんの所に行って計画を止める。行き過ぎた校則とか反省棟とか、全部終わりにしてくるね」
思えば心菜と会うのは半年ぶりだけど、その前だってまともな会話は長い事していなかった。こんなに穏やかに話すのはどれくらいぶりだろう。
「何でお姉ちゃんが行くの」
「知っちゃったからには行かなきゃ。それに私達のお祖父さんなんだよ?」
「……一樹とか康介に任せたらいいじゃん。お姉ちゃんだってまだ学生なんだからさ」
それはまるで行かないでと言っているようなもの。こちらを睨みつける姿すら可愛くて、こんな時なのに頬が緩む。
「でも行かないと。わかってるでしょ?」
ね? 語りかけると、心菜は床に視線を落とした。
「……また置いて行くんだ」
外見はお姉さんになったのに、その拗ね方はお留守番を嫌がる子供みたいだ。
ずっと気付かなかった。ようやく気付いた。
心菜はずっと変わってない。
我儘で我慢が嫌いで自分が一番じゃないといられない。
でも本当は誰より甘えん坊で、ただ構ってほしい、可愛いと言ってほしいだけなんだ。それは小さな頃から変わらない。
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