二、

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 そして私が一番年が近いから。一つしか違わない同性の兄弟だから一番甘えやすいんだ。  否、上の兄姉達は順番にネデナ学園に行ってしまったから、一緒にいられた時間は長くはなかった。心菜にとって一番一緒にいた兄弟は私。だからただ甘えていただけ。    嫌われてなんていなかった。  それに気付くまで随分かかってしまった。 「心菜、ありがとね」 「……何が」 「クリスマスプレゼント。ヘアゴムくれたでしょ?」  頭を動かして紺色のリボンの髪飾りを見せると、心菜は一瞬驚いたように目を丸くした。でもそれもほんの僅かな時間。 「名前がないとわからないよ」 「わかってるじゃん」  咲希が笑いかけると再び唇を尖らせる。 「うん。ここ、心菜が好きなお店だなって。半年間、ずっと大切にしてたよ。ありがとうね」 「……お姉ちゃんはくれなかった」 「心菜がくれるとは思わなかったんだもん。でも今年のクリスマスプレゼントは奮発するね」 「帰って来れないかもしれないじゃん。六か月もいなくなってたくせに」  憎まれ口を叩かれても、もう欠片も嫌な気持ちにはならなかった。  ヘアゴムは心菜が勝手に服を買おうとしていた大人フェミニンをテーマにしているお店の物だった。他にそのお店が好きな知り合いはいないし、もしかしたらとは思ってた。だけど、心菜がプレゼントをくれるわけないと諦めてもいた。  でも、屋敷でヘアゴムを見つめる度にもしかしたらなんて期待も募った。  ーー心菜がくれるわけがない。  ーー心菜は私を嫌ってる。  ーーでも、学園から唯一持ち出せたこのヘアゴムがもし妹からの贈り物だったら、どれだけ素敵だろう。  今日、その期待が確信に変わった。
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