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「約束するよ、ちゃんと帰ってきてプレゼント奮発するって。私が約束破った事あった?」
「……ないけど」
「なら、ね?」
待ってて。そんな思いを込めて微笑むと、心菜は一歩近づいてきて俯いた。
「……でもお姉ちゃん、ネデナ学園で待ってるねって言ったくせにランクの事も寮の事も教えてくれなかった」
「それは」
「寮の後輩にはご飯奢ってたり色々買ってあげたりしてるの知ってるんだから」
「心菜、それは」
「帰ってきてもどうせ私の事後回しじゃん」
聞く気があるのかないのか、言葉を遮って不満をぶち撒ける心菜の表情は見えない。
手を伸ばして頭を撫でてあげたくてもまだ遠すぎる。駆け寄りたくても足もその場から離れない。
咲希が言葉を見つけるより先に、尚人が口を開いた。
「心菜も来るか?」
その瞬間、心菜はパッと顔を上げた。
「行く!」
そのままこちらに駆け寄ってくる。
「ちょっと、尚人!」
「いいんだって」
「そうだよ、私も行くから!」
焦っても何のその。心菜の手は咲希のワイシャツを掴んで離す気配はない。
「でも危ないのに……」
「六人乗れるんだろ? 心菜も家族なんだから知る権利があるだろ。それに、俺もこいつの気持ちわかるんだよ。上が優秀でどんどん置いてかれてるみたいな。もう置いてかれて後から知るのは嫌なんだ」
「尚人、たまにはいい事言う!」
「たまにはって何だよ……」
もう止める事はできなかった。
「決まった? 行くぞ」
秀樹の言葉に揃って振り返る。
「気をつけてね」
「僕らはすぐに寮に戻って用意するから」
「絶対戻って来いよ」
「待ってますからね!」
「ああ」
「行ってくる」
華、謙太、博、宏太の四人に見送られて、屋上へと続く階段に足をかけた。
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