三、

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 姫と康介は静かに全てを聞いてくれた。 「……そうか」 「城之内家の力が働いていたわけね。どうりであらゆる国家機関に訴えても揉み消されると思った」  今までいた場所に家族の秘密、ネデナ学園の本当の目的。大層な内容を話した気がするけれど、二人の態度は変わらない。 「証拠は全部揃ってるんだな? よくやった」 「慧、偉いわ。歩いて咲希の所に行くなんて」  ただ全てを受け入れて、昔と変わらず褒めてくれる。肩から力が抜けた。 「どうにかここを開ける事はできないかしら」 「だからダメだと! ここでの会話は全てスタッフ無線に共有されています。ここを通す事はありませんし、まもなく警備員が到着します!」 「……ダメそうね」  姫は残念そうに息を吐いて、手招きするように擦りガラスの上で指を動かした。  呼ばれてる。  慧と二人、ギリギリの所まで磨りガラスに近寄って、ガラスに手を置いた。ガラス越しに姫の綺麗な手と重なる。 「時間がないみたいね。あなた達なら大丈夫、あと少し頑張ってきて」 「はい」 「二人の思うままに動きなさい。きっとうまくいくから。多少何かあっても、あなた達にはたくさんの味方がいるんだから絶対に大丈夫よ」 「はい!」  この人の声を聞くだけで本当に大丈夫だと、全てうまくいくと思えてくる。  それだけじゃない。柚子先輩や蓮先輩、今まで出会った全ての先端技術科の寮生に背中を押されているようなそんな安心感すら湧いてくる。 「行ってきます!」  大きく息を吐いて踵を返した。だけど低い声に呼び止められる。 「咲希、尚人」 「ん?」 「下に由羅と玲央も来てる」 「え?」
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