一、

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 六年ぶりでも間違えるわけがない。この人とも色々あった。アッシュ色のストレートの髪に黒のワンピースと赤い口紅がより美しさを際立たせている。この人がいるだけで空気が引き締まる、そんな存在感がある。何よりこの呼び方。ネデナ学園の怖さを最初に教えてくれた人。 「蘭沢先輩……」 「あら、良かった。覚えていてくれたのね!」  蘭沢まどかは変わらない綺麗な笑みを浮かべていた。 「何であなたがここに?」  尋ねると、まどかは悪戯が成功したかのように楽しそうに人差し指を唇に当ててみせる。 「んー? 今日から私がマナーの講師なの、あなたのお兄さんに頼まれたのよ?」 「一樹に?」 「そう」 「城之内先輩じゃなくて?」 「ええ、そうよ」  その言葉に耳を疑った。 「あら、信じられない? これでも私、大手美容サロチェーン経営者の娘よ? 小さな頃からその辺の教養はバッチリ!」 「いえ、そこじゃなくて……」  寧ろそこは納得でしかない。普通科の低ランクの髪を自分の言うがままに変えさせていたこの人。その指示は急な上に細かくて、それをまかり通すだけの力と知識を持っていた。何度か見た食事やパーティーでの姿も完璧だった。 「一樹と連絡とってるんですか?」  同じ普通科の城之内先輩ならわかる。でもこの人と一樹が仲良くしている所なんて見た事がなかった。一樹と城之内先輩の仲があれだけ悪いのだから、蘭沢先輩とも仲は良くないと勝手に思っていた。
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