三、

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 思わず今離れたばかりの磨りガラスを振り返った。それくらい衝撃的な言葉だ。 「お前の手がかりがあるかもしれないとわかって、あいつらも居ても立っても居られないとさ。下で園香と待ってる」  由羅と玲央がいる、という事は。  皆の方を見ると、尚人だけでなく一樹と心菜も動きを止めた。一樹がいる。康介がいる。尚人がいて心菜もいる。下には由羅と玲央もいる。兄弟全員が揃っている。  何年ぶりだろう。心菜は一樹と入れ違いでネデナ学園に入学したし、全員が揃うのは一樹が学園に行ってしまってから初めてだ。  自然と手に力が篭る。 「すぐ戻って来るから待っててって伝えて」 「ああ」 「やばいな、十何年ぶりだろ」 「……由羅と玲央もお姉ちゃんの事ばっかだろうけどね! 康介もお姉ちゃんと尚人の名前しか呼ばないし」  興奮する尚人と共に拗ねてみせる心菜の肩を軽く叩いて再び踵を返した。 「行ってくるね!」 「ああ」 「いってらっしゃい」  力強い言葉に背中を押され、廊下を進んだ。  そこにあったのは立派な木製の両開きの扉だ。さっき言われた通り、既に全スタッフに話が筒抜けなんだろう。 「ここはお通しできません」 「パーティーは既に始まっています。総帥より待機室で待つようにと言付けが」  屈強な男性二人が止めに来たけれど。 「うるさい」  一樹と秀樹がたった一言で制してしまう。二人の声は速さも高さもまるで同じで、やっぱり血の繋がりを感じさせた。  二人はそのまま両開きの扉を勢いよく開ける。
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