三、

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 その瞬間、眩い光が差し込んだ。次いで学園のクリスマスパーティーなんて比べ物にならないくらい広くて煌びやかな会場と、大勢の招待客の姿が視界に飛び込んでくる。  思ったよりも大きな音を立てた扉が注目を集めたんだろう、招待客は一様にこちらを振り向いた。  だけど、咲希達の視線はそれよりも更に奥、壇上で止まった。中央に立つのはグレーの羽織袴に身を包んだ祖父だ。祖父は一瞬険しい表情でこちらを睨みつけたけれど、すぐに取り繕った。 「皆様お待たせしました。先程お話しした城之内の時期跡取り、私の孫が到着したようです。まだ未熟ではありますが、少しずつ事業を継がせていきますので、御指導の程宜しくお願いします。……一樹、こちらに来なさい」  口元は笑みを作っているけれど、その目は拒否など許さないと告げている。招待客には微塵も感じさせない圧力に緊張が走った。だけど、一樹も負けていない。 「そんなお気遣いいただかなくて結構ですよ」 「……何?」 「そもそも僕に継がせる気なんてないでしょう? あなたは咲希しか見ていない。跡取りの座をチラつかせて僕達をいいように使っておいて、熱りが覚めたら咲希に全てを継がせるんですよね? 死んだ自分の長女によく似ているから」  人好きのする笑みを浮かべたまま、よく通る声で言い切った。
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