三、

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「何だ?」 「どういう事?」 「長女って……確かに城之内様のご長女様は亡くなってますよね」 「もう三十年近く前になるか?」  一樹の言葉に招待客達はざわめいた。  イブニングドレスに着物、タキシード。煌びやかな服装が浮いて見える人は一人もいないし、古い記憶にはなるけれど、多分テレビで見た事がある人の姿もあちらこちらに見える。  それにテレビ局や新聞社だろうか。フラッシュが光らないように気遣われてはいるものの、左奥に集められたカメラが一斉にこちらに向けられる。 「何を言ってる! そんなわけがないだろう⁉︎ 早く皆さんに挨拶しなさい!」 「確信もないのにこんな事するわけないでしょう?」 「秀樹、お前が唆したのかっ!」 「こいつが唆されるタマなわけないでしょ」 「なら何故っ!」  祖父が言葉を荒げると、会場は瞬く間に静まり返った。 「あ、いや……」  カメラの半数が向きを変え、流石にまずいと思ったらしい。 「失礼、少々行き違いがあったようだ。後継者の紹介はまた改めて日を設けさせていただきます。引き続きパーティーをお楽しみください」  苦々しい表情で取り繕い、壇上から去ろうとする。でも、ここで終わりにさせるわけにはいかない。 「そこにいる祖父、城之内利勝が理事長を勤めるネデナ学園では生徒が体罰や監禁等の不当な扱いを受けています!」 「何を言い出すんだっ!」  咲希が叫ぶと、会場中の注目が再びこちらに向いた。
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