三、

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 それと同時に祖父の目つきが一層鋭いものに変わる。 「本当の事ですよね⁉︎」 「まだ言うかっ! 何を証拠に!」  今まで閉じ込められて英才教育を受けさせられはしたけれど、それでもこんな風に怒鳴られた事はなかった。毎週の食事といい、きっと特別優しくされていた。  それが掌を返したように怒鳴られ。 「失礼、この子は私の孫娘ですが少々虚言癖が」  こんな事まで言われて。庇うように慧が横に並んだ。 「証拠ならありますよ、咲希」 「うん」  多少画面は小さいけれど、大丈夫だろう。清澄先輩特製電子辞書風ノートパソコンを立ち上げる。するとそこには見覚えのないアプリが入っていた。 「博と謙太、やってくれたよ」 「ああ」  囁いて、アプリを開く。外からは決して見る事ができない筈の学園内部の映像が映った。 「出番か?」 「うん、二人共ありがとう」 「ギリギリ間に合って良かったよ」  二人の後ろに見えるのはよく知った食器棚だ。先端技術科の食堂から繋いでいるらしい。 「お願い」  小さな画面を祖父や招待客に見えるように、特にマスコミのカメラに映るように向きを変えた。  まずは一つ小さく息を吸い込む音がする。そして。 「ネデナ学園8年生、田辺博と」 「山内謙太です」 「皆さん、どうかネデナ学園の現状を聞いてください」    二人の声が静まり返ったパーティー会場に響いた。
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