三、

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「なっ……」 「それに、署名もあります!」  華は高らかに宣言すると、紙の束を画面に近づけた。それにも見覚えがある。 【結坂咲希】 【一条慧】 【田辺博】 【山内謙太】 【井丹華】 【高山宏太】  一枚目にあるのは自分達の名前。二枚目、三枚目と捲られていくと卒業した健司先輩達を含めた先端技術科の寮生の名前と、尚人達の名前が続く。  昨年集めた署名の用紙だ。だけど。 「え……」  こんな束になる程集められなかった筈だ。  咲希が瞬きする間にも、華はどんどん署名用紙を捲っていく。 「全部で六百人分のネデナ学園の生徒の署名です。勿論全部筆跡が違う本物です。……咲希が連れて行かれた後も、隠れて少しずつ集めてたの」  最後の声は囁くような小ささなのにどこか自慢げ。  ーー華……。  口角が上がりそうなのを抑えて、祖父を見据えた。 「これでもまだでっち上げだと言いますか?」  唇を噛み締め睨みつけてはくるものの、言葉はない。もう何も言い返せないようだった。  会場のざわめきが大きくなる中、今度はマスコミのカメラにパソコンの画面を向ける。 「お願いします、これからお見せする物をどうか報道してください。……これがネデナ学園に隠された真実です」 「了解」  博が囁いたと共に画面が切り替わった。映し出されるのはきっと祖父が一番知られたくない物。 「何だあれ……」 「金額?」 「ネデナ学園は国家から予算が出ている筈なのに……民間銀行?」 「これはネデナ学園及び祖父に送られた裏金のリストです」 「やめろっ!」
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