三、

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「だから何だって……」  尚人は言葉も見つからないようで、それだけを零した。 「自分の思い描く国を立ち上げるために異常な環境に生徒を閉じ込めてたって認めるんですか?」 「この国が間違えた方向にばかり進んでいるからだろうっ! だいたい教育だって生温い、だからどんどん国力が下がるんだ!」 「脱落者の人をあんなに苦しめて⁉︎ 反省棟だって皆がどれだけ辛くて怖かったかわかりますか⁉︎」 「無能な人間は上に従えばいい! 無能な奴が好き勝手するからおかしくなるんだ! それをわからせてやるのが教育だろう!」  言い切る祖父には罪悪感なんてまるで感じられない。ただ本当に思った事を、正しいと考える事を告げているだけ。一瞬、何て返せばいいかわからなくなった。  だけど、そんなのが正しい筈がない。  静寂はすぐに破られた。 「……おい」 「おい、認めたぞ!」 「スクープだっ!」 「中継できるか⁉︎」 「会社に電話してくる!」  まずはマスコミが一斉に動いた。フラッシュが焚かれ、他より少しでも早く報道しようと慌ただしく会場を飛び出していく。  それを合図に他の招待客も動き出す。 「私は関係ないわ!」 「帰らせてもらうっ!」 「私も!」  ここにいれば仲間と思われかねない。マスコミに撮られるわけにはいかない。  ネデナ学園の真相に驚いていた招待客だけでなく、祖父に賛同していた人達まで巻き込まれたくないとばかりに駆け出した。  招待客で溢れていた会場が閑散とするまで、時間はかからなかった。
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