絶対不可侵領域

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『アツ、オナニーってしたことある?』 それは、俺が中学の頃の記憶だ。 アツはまだ小学生の上学年だった。恋だとかそういったものに色めきだつ子が増えてくる中、まだ外で遊ぶ方が楽しいといったくらいだ。 そんな弟に、俺はそんなことを尋ねていた。 『……オナニー?知らない……』 ちょっとした好奇心だった。 自慰行為を覚えたばかりで、アホみたいに友達と抜きあって遊んでいた俺はそれを弟にも試そうとしたのだ。 まだ未成熟だった弟にだ。 『こうやって、ちんちんを擦んだよ。そしたらすげー気持ちいいの』 最初は狼狽えるアツの目の前で制服の下を脱いだ。そして目の前で実践してみせたのだ。 『亘、なにして……』 『わかる?ほら、硬くなってきたの』 『……うん、おっきくなった』 『……ッ、そのまま擦るの、こうやって、上下してさ』 狼狽えるアツも異常さには気付いていたのだろう。それでも、アツは抵抗せず、寧ろ、興味津々になって俺の体に目を向けていた。 そして、まだ小さかったその手を重ねるようにして自身を擦り上げれば、酷く興奮した。 あのアツの手が、俺のを扱いてる。それだけで、ブスな女優の裸体よりも勃起するのだ。 『なあ、見て、これ、先っぽ濡れてきただろ?』 『うん……なんかぬるぬるするのが出てきた』 『っん、……これがぁ……気持ちいいってことで、その、次に白いのが出るから……それを女の子の中に出したら……赤ちゃん出来るって……っ、ぅ……ふふ、やべ、アツの指、ふにふにきててやべーわ……』 『亘、大丈夫?痛い?赤くなって、すごい苦しそう……』 『っ、ん、大丈夫……っ、ちょっと、気持ちよすぎてさぁ……ッ大丈夫、大丈夫だから、ぁ……そんな顔しなくていいよ……ッ!』 『本当?……亘、苦しくない……?』 『っ、アツ、んん……ッ、いい、すげー、イキそ……』 拙い指先。テクニックなんてクソもない、ただそのときのテンションに身を任せ、雑な手コキにも関わらずここまで感じてしまうのは相手がアツだからか。背徳感。まだ幼い弟を汚してるというその現実が何よりも興奮剤になるのだ。 『……すごい、亘の、ビクビクしてる……っ』 『あっ、ぁ、や、アツ……ッ、そこ……ッ!』 『ここ?ここが、気持ちいいの?』 最初は怖気づいていたアツは、いつの間にかに食い入るように俺の反応を見ては性器に触れていた。 馬乗りの体勢になったアツは、夢中になって俺のを弄っていた。一度目は自分でも驚くほど呆気なく射精した。 飛び散る白濁を被ったアツはイヤな顔一つせず、それどころか『お兄ちゃんのちんちんが怪我した』ってショック受けていたがそれを必死に説明したのを思い出す。 それから、何度か俺はアツと扱き合いをしたことがある。とはいっても、他の友達とするのとは違う。そこにはエロ本もエロ動画もない。お互いの体に触れたらすぐに勃起するのだ。罪悪感なんてなかった、ただ気持ちよくなれたらよかった。アツだって嫌がってなかったし、というのが俺の言い訳だ。 けれど、それがおかしいと気づいたのはそんなに時間は掛からなかった。 アツが中学に上がり、俺が高校生に上がった頃。 中学生に上がると同時に、小柄で、背の順としても前から数えた方が早かったアツの身長が伸び始めた。 夜、ベッドで眠ってるときだった。扉が開く音が聞こえてすぐ、もぞもぞと布団が動いたのだ。それからすぐ、背中の辺りに人の熱を覚えた。 浅い息。抱きすくめるように背後から体を弄られたところで、意識ははっきりと覚醒した。アツだとはすぐに分かった。 そのまま寝たフリ決めていると、臀部に勃起したものを擦りつけられ始める。 そこで、俺は自分とアツの意識に相違があることを知った。 そのときは俺が起き、アツのを扱いて抜いてやった。けれど、アツがもし俺に挿入しようとしていたと思ったら、少し焦った。 それからだ。俺は、アツと距離を置くようにしたのは。 手を出したのは俺だ。けれど、これ以上は違うと思ったのだ。 何度かアツに強請られたが、それでも拒んだ。最終的にアツと顔を合わせることすらも避けるようにして家の外で友達や当時の彼女と遊び回ることになる。 ずっと、忘れてた。 そんなことがあったな、と昨日の俺は笑い飛ばせていたのかもしれないが、キスをされた今、そして寝てしまった今、笑えなかった。 アツも、覚えていたというのか。 けど、時効だろう。俺も酔ってたんだし、今回のは仕方ない。……というか、キスしたことは思い出したがところどころ記憶があやふやなところが多いのも事実だ。 結局昨日はどこまでしたのだろうか。ケツに違和感はないが……。 なんて思いながら、一度リビングへと降りることにした。 アツはシャワーを浴びてるようだ。風呂場の方からシャワーの音が聴こえていた。
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