絶対不可侵領域

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「っ、待って……待てって、アツ……」 汗が滲む。足をばたつかせようとするものの、アツの指に力が入りそれすらも封じ込められる。ボトルのキャップを咥えて開けたアツは開いたその口をこちらへと向け、そして俺の制止を無視して肛門にねじ込んできた。正直、それだけでも生きた心地がしなかった。 アツ、やめてくれ、と口にするが、アツはふと笑って、そして思いっきりボトルを潰した。同時に、炭酸水が体内に流れ込んでくる。痛みにも似た刺激に、声にならない悲鳴が漏れる。冷たくて、熱い。テーブルの上、のたうち回りそうになる俺の体を押さえ込んだアツは、ボトルの口が外れないようにしっかりと根本を固定し、そして更に傾けてくる。甘い匂い。体の中で異物が弾けるその感覚は耐え難いもので。 「……っ、間抜け面だな……お前の付き合ってきた女たちに見せてやりてえわ」 見たことのない凶悪な笑み。息が浅くなり、目の前が霞む。炭酸ジュースで膨れる腹の中、動くことも辛くて、それでも構わずアツはボトルに残ったものを全て俺の中へと流し込んだ。最初のこのような冷たさはない。生ぬるい違和感が体を満たす。 「ぁ……あぁ……ッ!」 丸まった背筋へと流れるジュース。葡萄の匂いが辺りに充満する。息苦しさも違和感もだが、それ以上に、恥ずかしくて堪らなくて。アツの顔がまともに見れていないとき。 腰を抱えていたアツの手がぐっと俺の腰を高く持ち上げた。溢れる液体。空になったボトルを引き抜き、床へと捨てたと同時に、液体の溢れ出すそこにアツは口を付ける。それは躊躇いのない動作で、足と足の間、股に顔を埋めたアツはそのまま肛門に舌を這わせた。瞬間、血の気が引いた。品のない音を立て、アツは、俺の体内に押し流されたジュースを啜るのだ。 「……っ、うそ、やめ、飲むなッ、ダメだ、あつ、やめろ、やめろって……っ!」 足をばたつかせ、アツの背中を蹴る。けれど、それすらも無視してアツは指で濡れそぼったそこを押し広げ、そして最奥へと舌をねじ込んでは溢れるジュースを飲み干す。 アツの舌が這った場所が焼けるようだった。自分の体内、それも排泄器官を通ったそれを当たり前のように摂取するアツが理解できなくて、恥ずかしくて、目の前が赤くなる。何も考えられなかった。アツの髪を引っ張り、「やめろ」と声を荒げてもアツはやめなかった。膨れた腹が元通りに戻った頃。テーブルの上で横たわる俺を見てアツは笑った。アンタにも恥っていう概念あったんだな、とでもいうかのように。
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