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夏休み、久保田たちと遊んだり祭りに行ったりと旅行に行ったりと毎日外で遊び回った。
仲が良かった子に告白されたりもしたけど、久保田と遊ぶ時間が減ると思ったら付き合うことは出来なかった。
相手の子とも今まで通りになって、特に問題もなく俺は久保田たちとともに夏を過ごす。
八月下旬。
急に久保田の付き合いが悪くなる。
色々なグループのやつらとつるむ久保田を知っていたので、少し寂しく思いながらもあまり気にしないでいた。
夏休み終了間近。
今日は近くの商店街で地域の大きな夏祭りがあった。
『悪い、やっぱ今日無理そうだわ』
受話器越しに申し訳なさそうな久保田の声が聞こえてくる。
ここ最近まともに久保田と会えず、前から約束していた最後の夏祭りを楽しみに過ごしていた俺にとって久保田の一言はかなりキツかった。
『まじでごめんな。古屋、楽しみにしてただろ?』
「まあ、ちょっとはね。でも無理なら仕方ないよな。俺たちだけで楽しんでくるよ」
『ああ、学校で話聞かせてくれよな!』
久保田がいない夏祭りなんて。
そうは思ったが、変に駄々捏ねて面倒なやつと思われたくなかった。
学校まで我慢しなきゃいけないのかよ。
明るい久保田の声に反して、自分のテンションが下がっていくのがわかった。
結局、久保田の口から「やっぱり行く!」という言葉を聞けないまま夏祭りに向かう。
結論だけ言えば楽しかった。
楽しかったけど、やっぱり久保田がいないせいかあまり楽しむことに集中できなかった。
「古屋ー、花火花火。もうすぐだってよ」
友人の一人が声をかけてくる。
暗い夜空。
立ち並ぶ屋台の間を通り抜け、俺たちは海の近くまでやってきていた。
そこにはもう既に多くの先客が来ており、様々な層の人間で賑わっていた。
空を眺めながら砂浜を踏む。
ちょっと首が痛い。
一緒にいた友人たちがソワソワし始める。
どうやら、そろそろのようだ。
そう目を細めた瞬間、ヒュルヒュルと間抜けな音が聞こえてくる。
瞬間、パンと弾けたような音とともに夜空に大きな花火が広がった。
側にいた友人たちは、携帯で写メを撮りながら感嘆の声をあげる。
久保田がいたら、久保田はこの花火を見てどんな反応をするのだろうか。
そんなことを思いながら、上げていた首を下げる。
「あ、ちょっと俺便所行ってくる」
打ち上げ開始早々首を痛めた俺は、首筋を撫でながらそう友人たちに告げた。
花火に夢中になっていた友人たちは、「このタイミングで?!」だとか「早く済ませて来いよー!」とか楽しそうに笑うばかりで無理に止めるような真似はしてこなかった。
「三分で帰ってくるから待ってろよ」そう冗談めいた言葉を口にすれば、女子が呆れたように笑う。
集団と別れ、俺は花火を見物しにきた人混みを掻き分けるようにして一番近い場所にある公衆便所に向かった。
砂浜を踏み進む。
途中、見覚えのある人と会う度挨拶を交わしながら便所へやってきた俺はそのまま中に入る。
結構混んでたが然程時間はかからなかった。
便所で用を済ませ、外へ出る。
空にはまだたくさんの花火が上がっていた。
あいつら、どこにいるんだっけ。
さっそく道に迷い、人混みを見渡しながら自分がやってきた方角を確認する。
その時だった。
「つか、音まじうるせーな。ちゃんと俺の声聞こえてる?」
不意に、人混みの中から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
耳障りな喧騒に混じったそれは、間違いなく久保田の声だった。
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