4.お人好し

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 校舎内、保健室。  ガラリと音を立て扉を開けば、中の暖かい空気が洩れる。 「おっ珍しく少ない」それを無視してずかずかと室内に足を踏み込んだ岸本はきょろきょろと周りを見渡した。  岸本の言う通り、保健室には人気がない。  保健室の中央に置かれたストーブの前で足を止める岸本。手招きされるがまま俺はストーブに近付いた。 「あーなんか半乾きになって気持ち悪い」 「大地、ほら、こっちタオルあったよ。さっさと服脱ぎなよ」 「別にタオルだけでいいじゃん」  どっか取ってきたのか、洗い立てらしきそれを手にした岸本に急かされ俺はそう顔をしかめた。  すると、俺同様顔をしかめた岸本は「ダメだって、体拭かなきゃ風邪引くよ」とぴーぴー言いながら俺の上着を脱がそうとしてくる。  昔から岸本はやけにお節介というか余計なところで喧しい。こうなった岸本はかなりしつこい。 「あーわかったわかった、脱げばいいんだろ脱げば」  抵抗するのも面倒臭かったし、どちらにせよ濡れた尻が気持ち悪かったところだ。  言いながらまとわりついてくる岸本を退かした俺はその場で制服を脱いだ。  濡れたそれを近くにあった椅子に掛け、ストーブの熱が当たるように動かす俺はそのままズボンを脱ぎ上着同様ひっ掛ける。 「いや別に全部脱がなくていいよ」  すると、岸本はそう顔をしかめた。  言われて、自分が全裸だったことに気付く。  そう言えばノーパンだった。すっかり忘れていた。 「俺いまノーパンプレイ中なの」岸本から受け取ったタオルで髪を拭いながらそう言えば、岸本は「先にいってよ。嫌なもの見ちゃった」と顔を逸らす。 「葵衣ちゃんのえっち」 「不能になるからこっち見せないでね」  本当に可愛げないなこいつ。そこまで嫌がられると逆に無理矢理見せ付けててやりたくなるがそれを実行する程俺もあれではない。  渋々俺はもう一枚のタオルで下半身を隠すことにした。 「本当人いなくてよかった。変態と友達なんて思われたら僕の立場ないからね」  本当こいつは自分のことを棚にあげてものを言うな。  肩を竦め、そう皮肉を言ってくる岸本を睨めば、岸本は「それにしてもなんだったんだろさっきの」と徐に話題を逸らしてくる。多少ムカついたが確かにそれは俺も気になっていた。 「僕男に恨み買われるような覚えないんだけどなあ」 「どうせまた彼氏持ちに手出したんじゃねーの」 「面倒なことになりたくないからね、ちゃんとそういうのは確認してるよ」  色恋沙汰になれば見境無いやつだと思っていたが一応面倒なことになるという理解はあるようだ。  と思った矢先岸本は「まあいいや」と笑う。いいのかよ。 「じゃあ、僕教室行くから。ちゃんと鍵掛けときなよ露出狂」  そして、どうやらお呼びだしが掛かったようだ。相変わらずごちゃごちゃとキーホルダーをぶら下げた携帯電話を取り出した岸本は言いながら扉の方へと歩いていく。  多少気にはなったが、流石に全裸のまま岸本を追いかける気にはなれなかった。  最後の最後まで余計な一言が多い岸本にイラつきつつ「はいはい」と言いながら俺は岸本を見送る。
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