4.お人好し

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「日生君ってばそーいうプレイが好きなんだ……」 「だから違いますってば!」  喧しい日生のため、渋々短パンを脱いだ俺はそれを長椅子の上に放り、その横に腰をかける。  わりと裾が長いからポロリはしなかったが、逆に下なにも穿いてない方が絵面的にあれじゃないかと思いつつ制服と一緒にストーブに当たる。 「あー寒、足寒。日生君暖めて」 「知りませんよ」 「なんだよ、お前が嫌がる俺の短パンを脱がせたんだろ。責任取れよ」  どうやら下着を洗い終えたようだ。先程まで響いていた水道の水の音が止まり、絞った下着を片手にストーブの元までやってきた日生は「人聞きの悪いこと言わないでください」と顔をしかめる。  人聞きもなにも事実なのに。なんて思いつつ、広げて制服の隣に下着を置く日生を横目で追いかける。 「まだ乾かねーの」 「そんな早く乾くわけないじゃないですか」 「あー暇。日生君遊ぼうよ」 「俺は暇じゃありません」  ああ言えばこう言う。  いつもに増してどこか突き放すような言い方をする日生は俺の座る長椅子の端に腰を下ろし、机の上に置かれている体温計を手にとった。 「据え膳食さない男はモテないよー」 「どう見ても毒が混ざっている料理を食べるんですか、先輩は」  うっかり納得してしまったがかなり失礼なこと言ってないか、こいつ。  シャツの前を緩め、そのまま服の中に手を入れる日生はそのまま体温計を脇の下に挟む。  どうやら体温を計りに来たというのは本当のようだ。  そのまま背凭れに上半身を預け寛ぐ日生を横目に「せっかく乾くまで相手してやろうかと思ったのに」と唇を尖らせれば、日生はこちらも見ようともせず「結構です」とだけ答えてくれる。可愛くない。 「ついこの前まで素直ないい子だったのになんでこんなにひねくれたんだか」  つまらなくなってそう足を組みながら背凭れに寄りかかれば、どうやらそんな俺の言葉が癪に障ったらしい日生は「なにがひねくれですか」とこちらを横目に睨んできた。 「あんなことしといてよくそんなこと言えますね」そして、不快そうに眉を寄せる日生。 「あんなこと?」  心当たりがありすぎて逆に思い付かない。  そう聞き返せば、益々日生の顔が機嫌悪そうなものになる。 「……よりによって七緒に、言い触らすなんて」  なるほど。どうやら日生は先日七緒のマンションで会ったときのことを言っているようだ。  七緒も日生もなにも言ってこないものだからすっかり忘れていたが、どうやら日生は根に持っているようだ。ちっちゃいやつめ。 「ああ、あれ」と思い出したように声を上げる俺は「別にちょっとからかっただけだろ。日生君が普通にしとけばバレなかったって」と笑いながら日生に目を向ける。恨めしそうな顔をする日生と目が合った。 「つーかなにか言われたの?」  そう尋ねれば、呆れたように目を伏せた日生は「ええ、色々」と静かに頷いた。 「ふーん、そりゃお疲れ様。俺が聞いたのは最近日生君が七緒に冷たいっていうのだったけど」 「七緒が言ってたんですか?それ」 「冷たくしたわけじゃないですよ、別に。七緒が勝手に臍曲げてるだけです」臍を曲げてるのはどちらなのだろうか。  そっぽ向いたままそうなんでもないように続ける日生だがその口調は刺々しい。  どうせ日生に対しぐだぐだ文句言った七緒に日生がキレたのだろう。  まあ、日生と七緒がべったり仲良しというタイプには見えなかったが、日生と七緒が喧嘩か。ちょっと見たかった。七緒がわんわん泣いてるのしか想像できないが。 「ピリピリしてるねえ日生君、カルシウム摂らないと。ストレス溜まってんじゃね?」  先日最後に会ったときに比べ、日生の苛つき具合は目に見えるくらいのもので。 「……誰のせいだと」と日生は目を細めたがそれも束の間。  俺に八つ当たりをしても無駄だと悟ったのだろう。  言いかけて、口を閉じた日生は深く息を吐き自身を落ち着かせようとした。  ふと、静かな保健室内体温計のアラーム音が響く。どうやら計り終わったようだ。 「とにかく、あまり七緒には近付かないようにしていただけませんかね」  そして、制服の下から体温計を取り出す日生はそこに表示された体温を一瞥し、体温計を元あった場所へと戻す。  あくまで相手は冗談で言ってるわけではないらしく、その口から飛び出した言葉に素で驚いた俺は目を丸くした。 「なにその展開」  どこのドラマだよ。と思ったがこういうことを言われたのは初めてではない。  が、まさか日生の口から聞くとは思わなかった。 「悪影響なんですよ、先輩は七緒にとって。そういう気がないんでしたら七緒を甘やかさないでください」 「恋人がいるなら尚更、七緒にまで手を出す必要はないじゃないですか」なんだかんだ、七緒のことを心配しているということだろうか。  ただ単にむしゃくしゃして自棄になっているだけのようにも見えたが、本心なことには代わりないだろう。 「へえ、ビックリした。日生君って結構独占欲強いタイプなんだ」  呆れたようにそう笑う俺に、「ですから、茶化さないでください」と日生はかっと顔を赤くした。  怒ってるのか恥ずかしがっているのかわからなかったがこの際どちらでもいい。 「そんなこと口で言ったところでなんの制限にもならないってわかってんだろ。そーいうのは行動で示して貰わないとなあ」  にやにやと頬を弛ませる俺は隣に腰を掛けた日生に目を向け、そのまま日生の顔を覗き込んだ。 「そう。例えば、日生君が七緒の代わりになるとか」  身を乗り出すようにしてどちらかといえば細いその腿にそっと手を伸ばしそう笑いかければ、日生の体があからさまに緊張した。わかりやすい。 「っていう展開期待してんだろ?このムッツリ」 「……っ違います」  そして、からかうように笑えば耳を赤くしたまま顔をしかめる日生に手を振り払われた。  乾いた音が響き、思いっきり叩かれた手の甲がじんと痺れる。ちょっと痛いが、此花や多治見に殴られたとき程ではない。 「おー日生君機嫌悪いねえ、七緒の言った通りだ」 「ちゃんと抜いてる?」手の甲を擦り、咄嗟に逃げようとしていた日生の手首を掴んだ。  細い手首。しかし、しっかりとしたそれはなかなか掴み心地がいい。 「俺なら、日生君のストレス解消してあげられるけど」  そして、そのまま日生の手首をくいっと引っ張る。  座面の上に膝立ちになった自分の下腹部へと持っていった俺は「ほら」と笑いながら日生の指を自分の指に絡めるように掴み、そのまま露出した肛門に沈めれば、中を引っ張るような小さな痛みに背筋が震えて、アホかバカを見るような日生の侮蔑の眼差しがなかなかそそられてまあ取り敢えず後は言うまでもない。  イラついたような顔をする日生に無理矢理指突っ込まれてケツが痛い。  と言うわけで数十分後。  そのままケツ弄られてしゃぶって突っ込まれて中出しされてとまあ無人だというのを良いことに色々やったけど途中、保健室に生徒来て見られそうになって焦った日生に無理矢理離され、まあ、そんな感じで終わった。  日生と言えば、射精して冷静になったらしく顔を赤くしたり青くしたりしてさっさと保健室から出ていった。半裸放置された俺はなんだか不完全燃焼だったが、ちゃんと制服が乾いていたのでいいとしよう。  そういうわけで体操服から制服に着替えた俺は腰いてえと顔をしかめつつ、愛斗んちへ向かうことにした。
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