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カリアゲ坊ちゃん
私が独身の頃のお話。
いつも利用している私鉄に乗っていた時の出来事。
空いていたから、夜の上り電車だったかもしれない。
車内の乗客はまばらだったので、どの座席も座れたんだけど、
なんとなく4人掛けの優先席のドア側の端に座った。
いつも電車内で読むハードカバーの小説を鞄から取り出し、続きを読み始めいつしか読み耽っていた。
ページから顔を上げると、いつの間にか左側に人が座っていたのを知った。
またページに目を落とし、小説の世界に戻る。
左に座る人はやたらとガサガサ音を立てて動く人だ。
私の視界の端にもぞもぞ動くのが見え、いい加減気が散ってきたので、
『うっさいな』
と思いながら顔を上げ、左の人を見た。
コートを着てカリアゲ坊ちゃんヘアの中年男。
妙に色白で気弱そうで、新聞を広げて座っていた。
そのカリアゲ坊ちゃん、新聞を読みながらなんか手を上下に動かしてるಠ_ಠ
はぁ?
と思いよく見ると、自分のイチモツ触ってるぅ〜(☞ ಠ_ಠ)☞
しかも新聞で周囲をガードしてまで私にだけ見せてくれちゃってる。
『気持ち悪っ!』
だけど何事もなかったようにまた視線を本に戻した。
うーん、これはどうするべきか。
変態だ。
すっげぇ気持ち悪い。
カリアゲ色白極小!
なぜそんな貧相なものを私に見せびらかすのだ?
もう本の内容なんて入ってきやしない。
カリアゲ坊ちゃんはまた手を動かしているのが視界の端っこに入る。
『あぁーウザい!、邪魔。』
手にしているハードカバーの本をパン!と思い切り音を立てて閉じ、顔を上げてカリアゲ坊ちゃんをガン見。
カリアゲ坊ちゃんはみるみる狼狽えた顔をして、何事もなかったかのように体制を整えてから座席を移動した。
読書を邪魔されて悔しかったので、なんとなーく付かず離れずの距離で、私もカリアゲ坊ちゃんの後を追い座席移動。
私の存在に更に狼狽えたカリアゲ坊ちゃんは、やっと停車した駅で逃げるように下車していった。
ざまあみろ。
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