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「っぷは!……こ……殺す気かよ……っ」
「それはこっちのセリフだ!人聞きの悪いことばっかり言いやがって、俺を社会的に殺す気か!」
「だ、だって、本当のことだし……」
校舎内、空き教室前。
二人きりになった途端弱気になる目の前の男。
それにしてもころころと表情の変わるやつだ。
だからといって許してやる気は毛頭ないのだけれど。
「ミチザネがいなくなって、酷い目に遭ったんだからな。あの顔怖いやつに怒鳴られて、殴られそうになったから先に殴って逃げたら怖い顔して追いかけてくるし……あの時あそこでガソリン缶がなかったらどうなってたことやら」
「力也先輩……」
ガソリン缶と力也先輩に何があったのかそっちの方が気になったがなんだか聞くのすら恐ろしい。
「それで、わざわざ嫌味言うためにここまで追ってきたのかよ。っつーか、どこで俺の名前知ったんだよ」
「さっき、あんたと一緒にいたなよっとした人がそう呼んでたから」
「……」
静間の野郎。
「なら、場所は?なんで俺のクラスまで知ってんだよ」
「あんたの匂いを追っ掛けたらここに辿り着いたんだよ。そしたら、なんか怖い顔のジャージ着たおっさんに追い掛けられるし……」
顔の怖いおっさんというと、体育の小峯のことだろうが……匂い?匂いってどういうことだ?
まさか犬みたいに嗅いできたというわけではないだろうが、どちらにせよ男はちゃんと答えるつもりはないのだろう。
そもそも、最初から胡散臭い男のことだ。信じる方が馬鹿らしい。
「で、ここまで来た理由はなんだよ。俺に文句を言いに来ただけならもう済んだだろ」
「う……」
暗に『さっさとここから出て行け』と伝えれば、男もそれに気付いたのだろう。
小さく呻く男は返す言葉が見付からないようで、あからさまに視線を迷わせた。
そして、
「あ、あの……」
「あ?」
「一生のお願い!俺を匿っ「断る」って早いっ!」
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