最終章

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 イロアスが出ていったあと、俺は風呂に入って全身を清めた。頭から水でも被ればこの気も収まるだろうと思ったが逆効果だ。  何をしてもあいつの、イロアスの情けない面が蘇っては腸が煮え繰り返りそうになる。  風呂を出て、一先ず収まった体の火照りにほっとする。中途半端に弄ばれたせいで余計イライラしてるのかもしれない。  ……とにかく、早くナイトに会わなければ。  この隙に宿を出るのが一番だとわかったが、それでもやはりナイトのことが気がかりだった。せめて最後にもう一度会いたかった。  謝らないと、謝って、お礼を言わないと。  そうそっと部屋を出ようとしたときだった。 「こそこそとどこに行くんだ?スレイヴちゃん」 「……ッ!メイジ……!」 「駄目だろ、勝手に出歩いちゃ。……また勇者サマに閉じ込められるぞ」  いつからいたのか、扉の前に立ち塞がる見たくない顔に血の気が引いた。厄介なやつに見つかった。 「退けよ、邪魔なんだよ」 「ひでー声。体もまだ本調子じゃないんだろ?そんなんで出歩いちゃ危ないだろ」 「お前なんてすぐ捕まってまた犯されるんだろ?」と当事者のくせに他人事のように笑うメイジ。腰に回された手に徐に尻を揉まれ、慌てて俺は「やめろ!」とやつの腕を剥がそうとする。 「それとも寂しくて男探してたのか?それなら俺が相手してやってもいいけど」 「ふざけんな、誰が……っ!触るな、退けッ!」 「そう大きな声出すなって、勇者サマが飛んでくるだろ」  衣服越し、尻の谷間をなぞるように這わされた細く、がっしりとしたその指が股の隙間に差し込まれ堪らず息を飲む。 「メイジ……ッ」 「だから言っただろ、俺と逃げときゃ良かったのにって。ナイトまで巻き込まれて可哀想に」 「……ッ」  ナイトの名前を出され、堪らず息を飲む。  それをメイジは見逃さなかった。逸らそうとした顔、その顎を掴み上げられる。 「でもまあ、俺としては堂々とお前を犯せるようになって全然アリなんだけど」  そう笑い、唇をれろりと舐められ寒気を覚える。咄嗟に口元を手で覆い隠そうとするがすぐに手首を掴まれ、引き剥がされた。そして覆うこともできずに今度は頬を舐められるのだ。 「っ、や、めろ……気持ち悪い……ッ!」 「なんだ、髪が濡れてるな。こんな時間に風呂に入ったのか」 「勇者サマか?」と笑うメイジに唇を撫でられる。耳たぶに触れた唇に直接息を吹き掛けられ、背筋がぞくりと震えた。せっかく収まったばかりなのに、下心を隠そうともせず触れてくる手に反応してしまう自分の体がただ忌まわしい。 「っ、退け、邪魔するなよ……っ」 「お前、また逃げようとしてんだろ?……それとも、ナイトに会いに行くつもりか?」 「……ッお前には関係ないだろ……!」 「まだ俺のことを『関係ない』って言うのかよ。……本当可愛げないやつだな、お前。昨日はあんなにあんあん言って可愛かったのに」 「黙れ……っ!今直ぐその口を閉じろ!」  そう胸倉を掴もうとすれば、俺をじっと見つめていたやつは何の躊躇もなく唇を塞いでくるのだ。  こいつ、と思ったときには遅い。 「っ、ん、は、はなせ……ッ、ん、ぅ……ッ!」  ぢゅ、と唇を吸われ、甘く噛まれたと思えばぬるりとした舌に唇を舐める。 「っ、む、ぅ……ッ!」  まるで飴玉でもしゃぶるように執拗に唇をむしゃぶりついてくるメイジの体重に負け、壁に押し付けられたまま動けなくなる体。しつこい、それ以上に、不快感に耐えられず俺は思いっきりやつの脛を蹴った。 「……ックソガキ」 「っ、退け!こ、……んぉ……ッ!」  ほんの一瞬、唇を離したメイジは再度俺の顎を掴みそのまま深くまで舌をねじ込んでくるのだ。先程までイロアスに蹂躙され、散々敏感になっていた口の中は肉厚なその濡れた感触が触れるだけで唾液が滲み、喉奥舌の根ごと執拗に愛撫されるとそれだけで思考を掻き乱される。  腰から力が抜け落ちそうになり、壁に体重預けることで立ってるのがやっとの俺にメイジは舌を引き抜き、微笑んだ。 「……おかしいな、まだなんのデバフも掛けてないんだけどな」 「なんだ?これ」と手の甲で股間を撫でられ、息を飲む。指摘され、自分が勃起していることに気付いた。顔が熱くなる。  違うと言いたいのに、見てわかるほど張り詰めたそこに俺は言葉を飲んだ。
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