約束の日

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約束の日

 ジェダと約束の日。  夕食を済ませて、テレビで撮り溜めしていたアニメを観ていると、ジェダが隣に座ってきた。 「コト。話があるんだ」 「何?」  テレビの音量を低くすると、ジェダに向き直る。  いつになく、緊張の様子を見せるジェダに私まで緊張してくる。 「実は……今、働いているレストランで、正社員にならないかと言われて」 「そっか」 「正社員になれば、給料も上がって、給仕以外に事務仕事もさせてもらえる。今以上に忙しくなるけど、それでもよければって。  この間、店長の家に泊まった時に提案されたんだ」  改めて言われなくてもわかっている。  ジェダの答えは、いつだって「いいえ」だ。  これまでも、ジェダはあちこちでアルバイトをする度に、正社員に誘われていた。  けれども、ジェダはいつか元の世界に帰る身であり、そもそもこの世界での身分証が存在しない。  正社員になれば手続きの過程で、ジェダの身分証がない事がバレてしまうだろう。  それもあって、これまでジェダは正社員の話を断り続けてきた。  断る度にそこで働き辛くなって、いつも辞めざるを得なくなった。 「それで、何て返事をしたの?」 「その話を受けますって。昨日、言ってきた」 「えっ!?」  どうせ断ったのだろうと、リモコンに手を伸ばしたところで、意外な回答に驚愕して隣を振り向く。 「急にどうしたの? だって、今までは正社員の話を断ってきたじゃない!? いつか元の世界に帰るからって……」 「これまではね。でも、今はそうじゃないから……。好きな人が出来たんだ」 「好きな人? そうなんだ……」  私は何を落胆しているんだろう。  三年も暮らしていれば、ジェダに好きな人が出来てもおかしくない。  私たちは一時的に同棲をしているだけ。いつか、ジェダはここを出て行く。  わかっていた事なのに……。 「それで、急に働き始めたんだね」 「この世界に来てから、その人に頼ってばかりだった。そろそろ、頼ってばかりいないで、自力するべきだと思ったんだ。プレゼントしたい物もあったから」 「そっか。想いが伝わるといいね」 「ありがとう。コトには最初に話しておきたくて。それで、ここからが本題」  ジェダが背中に手を回して、何かを取り出そうとしている間に、私はテレビを消してしまう。 「コト」  
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