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「じゃあね、最下位ちゃん」  一位で名前を呼ばれた華廼(かの)あいらが、ふふんと鼻で笑って横を通り過ぎる。モニターが埋め尽くされるほどの歓迎を受けながら。  すごすご裏に下がりながら、ちらりと特設ステージを見た。  かわいいバルーンがたくさん飾られたステージ。巨大なLEDスクリーンには、セレアイメンバーをイメージした、ポップなアニメーション映像が流れている。曲のフィナーレには、風船が落ちてくる演出まで用意されている。  とってもかわいいステージセットを見ていると、ますます気持ちがブルーになっていく。 (あいらたち、今から歌うんだ。スポットライトがきらきら照らす、あのステージで。…私だって、そこで歌いたいのに。そこで歌いたくてアイドルになったのに)  そのためにたくさん練習してきた。地道にネット投稿活動もしてる。なのに、ステージに立つ権利すら与えられないなんて。  うらやましくて、くやしくて。  自分がふがいなくて、悲しくて。  それら全部の感情から逃げたくて。  歌ってる仲間たちから目を逸らし。  私はスタジオから飛び出してしまった。
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