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「まあ、よう来て下さったの〜
この村に、新しい人が越して来るなんて10年振り以上なんじゃないかの
それも、お若いご夫婦で
分からん事有ったら、何でも聞いて下さいな」
引っ越しのトラックを目ざとく見つけて、鍬を持った儘お爺さんが寄ってくれた。
歳は70過ぎだろうか、真っ黒に日焼けした顔に麦わら帽子を被り、ランニングシャツにステテコ姿。
「有難う御座います
今日からこの村でお世話になります、冴木と申します
色々村の決め事なんか有ると思いますので、教えて下さい」
すると、お爺さんは此処から少し下った家を指差し
「わしは、あの家に住んどる山中って言うんじゃが、この集落の半分は山中と橋元って名前じゃ
じゃから、皆は下の名前で呼んどる
わしゃ、専治って名前じゃ」
「そうなんですか!
じゃあ、専治さん
荷物が片付いたら、改めてご挨拶に伺います」
お爺さんはトラックから運び込まれる荷物を見て
「都会の人の荷物は、しやれとるの〜
年寄りばかりの村じゃから、珍しいもんばかりじゃわ
じゃあ、又後での」
お爺さんは、手を振り山道を下って行く。
優しそうなご近所さんで良かった。
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