冷たい彼女

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「お帰り、エコバック重そうだな。キッチンまで持って行ってやるよ」 「ありがとう。今日は食材が多いの。ポテトサラダとハヤシライスを作ろうと思って」 「へえ。牛肉か。今日はお昼が牛丼だったけど、ハヤシライスは食いたいな」  和志は微笑んだ。お母さんはコートを脱いでハンガーに掛けた。シャツにカーディガンになった後、ピンクのエプロンを着ける。和志はお母さん似だ。一重の大きな目はそっくりと言われる。 「今日も二葉ちゃんと帰ったの?」 「うん、手を繋ぎたいって言ったらまた笑われた。そして冷たいからって言われた。二葉は幽霊なんだもんな。生きてる子とは違うんだな」 「そうだよ。いつまでも付き合ってると二葉ちゃんも成仏できないよ」  和志は眉を下げた。成仏したら一緒に帰ることが出来なくなる。それは寂しすぎると思った。一年も付き合ってないのに別れるなんて。  お母さんはジャガイモの皮を剥き始めた。二葉は料理が苦手だからこういう姿を見せなかった。高校生だから当然か。和志はそれでも二葉が大好きだった。結婚して二葉がキッチンに立って和志はお父さんのようにビールを飲んでという、明るい家庭を作りたかった。
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