冷たい彼女

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 六時半になると家のカーポートに車が停まった。和志は一階に降りる。お母さんがエコバックを二つ持って玄関を上がった。 「お帰り、明日、土曜日だろ。ちょうど二葉の月命日なんだ。お墓参りに行ってくるよ」 「もう三か月経つのね、あの子、体が弱そうに見えなかったのに」  二葉は何度も和志の家に来ていてお母さんとも仲が良かった。よく夕飯を一緒に食べた。  和志はキッチンに置いてあるテーブルの椅子に腰掛けた。お母さんは冷蔵庫に食材を入れる。和志は頬杖をついた。 「いまだに二葉と一緒に帰ってるんだ。幽霊になってもちゃんと学校に行ってるんだよ。でも手を繋ごうとしたらケラケラ、ケラケラって笑われちゃったんだ。お母さんは異性と手は繋がなかった?」  お母さんは振り返った。目を見開いていた。幽霊と会っていることに驚いている。和志は構わず続けた。 「高校生になったら手くらい繋ぐよな。僕のこと彼氏だって分かってるのかな?」  和志はキッチンの曇りガラスを見た。外はもう暗い。 「和志、幽霊に憑かれてるの?」 「そんなんじゃないよ。ちゃんと駅で別れて二葉はお墓に帰ってる。憑くのは成仏してない怨霊だろ」  お母さんは眉根を寄せて、ピーラーで人参の皮を剥き始めた。和志は好き嫌いがない。作る立場の人間からしたら楽だ。二葉は穴子がダメだった。二人で回転ずし屋に行ったとき知った。蛇を想像してしまうんだと言う。聞いたらウナギも食べられないと言った。  八時にお父さんが帰って来た。お父さんはコンピューター関係の仕事をしている。和志も将来はその方面の仕事に就きたい。お嫁さんは二葉がいいと思っている。
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