冷たい彼女

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「明日はバイトでしょ?今度はバイト先の本を持って来てよ」  和志は古本屋で働いている。日曜日だけで時給が千円だ。今年に入ってから働き始めた。 「ああ、いいよ。幽霊でも本が読めるのか?どんな本がいい?」 「ホラーがいいな。墓場で読むと怖さが増して面白そう」  二葉はそう言うと「ケラケラ、ケラケラ」と笑った。和志は寒気がした。こんなところでホラーが読めるのは凄い。でも幽霊の二葉は生前と変わらない美少女だ。静脈の透ける手。きれいな形の爪。和志は言った。 「今度の月命日に持って来るよ。学校帰りじゃなくてお供えした方がいいだろう」 「うん。月曜日も和志くんの教室の前で待ってる。そういえばこの前、弥生と仲良くしてたでしょう」  弥生は二葉と中学時代からの親友だ。お祖母さんがイギリス人で外人みたいな顔だ。長い髪を結わえている。弥生は二葉が幽霊になって現れていることを知らない。でも時々、二葉の気配を感じるんだそうだ。 「二葉のことを話してたんだよ。妬いているのか?」 「まさか、二人のことは信じてるもの」  和志はにっこり笑った。  一時間くらい話して帰途に就いた。お寺を出たところの家の庭に梅の花が咲いていた。春はやって来ている。
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