冷たい彼女

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 家に着くとロング丈のピーコートを脱いでクローゼットに掛けた。ベッドに腰掛けてピンク色のギターを弾く。今年の冬に流行ったポップスを歌いながら弾いた。和志は軽音楽部だ。バンドを組んでライブとかやってみたいと思っている。弥生も同じ軽音楽部でキーボードをやっている。この部活は週に二日しか活動しない。二葉はバレー部だった。だから生きているときは和志は教室か図書室でバレー部が終わるのを待った。今は待たなくても二葉とは帰れる。和志は歌を歌いながら歌詞に酔った。  次の日バイトに行くと、レジに立った。小さい子がマンガ本を五冊持ってカウンターに置いて笑った。親が千円札を財布から出した。和志は心ここにあらずでホラー小説は何にしようか考える。女の人がやって来て驚いたような顔をした。 「君、幽霊に憑りつかれてるよ」 「えっ?今、見えるんですか?」 「いや、今はいないけど君の守護霊が言ってる。いきなり驚いた?でも、身に覚えがあるでしょう」  和志は苦笑した。二葉なら全然怖くないし大丈夫だ。 「僕の彼女、死んだから」 「そう、きっとその子ね。お祓いした方がいいんじゃない?もしくは蛇を飼ったらいいみたい。女の子は蛇が嫌いだったでしょう」  お祓いをしたり蛇を飼ったりしたら二葉と会えなくなってしまう。学校から帰るのは二葉とじゃないと和志は嫌だ。頭をプルプル左右に振る。 「彼女は祓いたくありません」  女の人は手のひらを上に向けた。そして唇を突き出して帰って行った。本を買って行かなかった。
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