冷たい彼女

7/13

25人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 バイトが終わり家に帰る。着ていたスウエットのまま一階でテレビを観た。アニメを観ているとお父さんがグラスに入ったビールを持ってテーブルについた。この家はリビングがソファーじゃなくて絨毯の上にテーブルを置いている。ゴブラン織りのクッションが四つ置いてある。 「和志、二葉ちゃんの幽霊と会ってるんだって?お母さんから聞いたよ」 「うん、毎日一緒に帰ってるし、昨日はお墓参りで会ったよ。そういえば女の人に幽霊に憑かれてるって言われた。二葉は怨霊じゃないのに。可笑しいよな」  お父さんはグビグビっとビールを飲んだ。たちまち顔が赤くなる。 「それでも二葉ちゃんと会ってるのはどうかと思うよ。結婚出来るわけではないんだから付き合うのなら生きてる子にしろよ」  和志は二葉が大好きだ。そんなこと考えられない。赤ちゃんは無理にしろ結婚したい。  テレビはアニメが終わった。キッチンから油を炒める音がしてくる。夕ごはんは炒め物だ。  寝る時間になった。和志は電気を消して目を瞑った。二葉のことを考える。生きているうちにもっと思い出を作ってあげられれば良かった。遊園地に行ったり水族館に行ったり。二葉は「あまりお墓から遠いところには行けない」と言っていた。  月曜日に学校で弥生と学食へ行った。いつもは一人で行くのだが弥生がお弁当を忘れて困っていたのを知った。和志は弥生を誘った。 「学食も案外美味しいぞ。弥生は食ったことがないだろう。あそこ男子ばかりだからな」 「うん。だから一人じゃ行きづらい」 「僕が一緒なら大丈夫だよ。お昼抜きだとキツイぞ」  自然とこういう流れになった。和志は弥生のことをいい友達だと思っている。同じ軽音楽部だし、バンドをやることになったら弥生にもメンバーになって欲しい。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加