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同窓会の裏の声。
葛西竜哉の書き出しバージョン。
ポツポツと小雨が降り始めた。
せめて今日くらいは晴れてくれるかと期待したが、最近の悠輝の心の中を反映しているかのように、ここ数日はぐずついた天気が続いている。
悠輝は洒落た感じの居酒屋のドアを開けて中に入った。
「いらっしゃいませぇーーー」
入るなり威勢のいい声をかけられる。
「あ、あの、山田慶太の名前で予約をしていると思うのですが」
「ああ、こちらです。どうぞ」
女性店員に招かれて、奥の座敷に通された。
靴を脱ぎ、襖を開けると、中には懐かしい顔の三人がいた。
「えっ、えええええ」
「マジか?」
「誰?」
三人が驚きの顔で悠輝を見る。それもそのはずで、学生時代の悠輝は、今のマッチョな姿とは違い、自分のクラスで虐められては、三人のいるクラスに逃げ込んでいくような、貧弱な身体だったのだ。
「おいおいおい、誰って何だよ」
悠輝は三人の大袈裟なリアクションに苦笑する。
「そういうオマエらは変わってないな」
そう言ってから、ガリガリに痩せこけている優馬に気がついて、思わず唖然とした。
学生時代クラス一のモテ男だった面影など、今の優馬には微塵もない。
「最近どう?」
話のネタ振りとして、悠輝は特に何も気にせずに皆に聞いて見た。
が……誰も答えようとしない。
「俺はさぁ、面倒な案件を任されててさぁ」
仕方がないので、率先して自分から話した。
「で、慶太オマエは?」
「私? わ……おれは順調。経営も慣れてきたし、新しいお店も開いたからな」
「ん? 何だよワタシって」
学生の頃の人称と違った「私」という言葉に、時間の流れを感じて、悠輝は慶太にツッコんだ。
「いや、取引先と話すときは、私って言うから。それと混じっただけ」
「ふーん」
「あーーそれはあれか? 高二の時、はるきが好きだった中田羽菜が、小林先生に責められて詰め寄られたとき、先生に向かって「お母さん」って言ったのと同じやつな」
悠輝の双子の兄、光輝が笑いながら割って入る。
「で、私はアナタのお母さんじゃありませんって言われて、真っ赤になって謝ってた」
「違うよお兄ちゃん、全然違うってば、懐かしい名前を出すなよ」
悠輝も笑って返した。
「おっ、悠輝、オマエまだ光輝のことを、お兄ちゃんって呼んでんのか?」
「え? あ、ああ、何となく変えるタイミングを見失っちゃってさぁ」
「ふーん」
慶太に聞かれて、悠輝は少し照れたように笑う。
「で、お兄ちゃんは?」
双子でありながら、高校を卒業してからは、まったく別の道を進んだこともあって、疎遠になっていたから、悠輝は光輝の近況を知らない。
ガッチリした悠輝に対して、光輝はかなり痩せているので、知らない者は誰も双子だと分からないだろう。
「まぁ、俺はぼちぼちだよ。それよりさぁ、担任だった丸山先生って、今何やってんだろうなぁ」
何がどうぼちぼちなのか、悠輝には分らなかったけど、双子だから、あまり詮索しないでくれ。という光輝の気持ちは伝わったので、それ以上深く聞かなかった。
すぐに光輝が話題を変えたのでも、それが伝わったからだ。
「知らないよ。俺の担任じゃなかったし」
悠輝は三人とはクラスが違ったのだ。
「あ、あの先生なら、とっくに隠居しちゃってて、何でもボケちゃったから、施設に入ってるって聞いたわ」
慶太が思い出したように答える。
「マジかよ。オレさぁ、あの先生には散々叱られたからなぁ、卒業式の日にマジでお礼参りを考えてたぜ」
光輝が懐かしそうに斜め上を見上げた。
「うん。分かる。わたし……俺も嫌いだった。何か今思い出しても、怒られてる顔しか思い出せないし」
「だよな。ってか、慶太オネエ言葉になってんぞ」
「エッ、ヤダ。変なこと言うなよ」
光輝がおかしそうに笑って、慶太はそれを睨んだ。
そんな中、優馬だけが会話に入って来ない。
「優馬は今、何してんの?」
「べ、べ、別に……普通」
悠輝が話しかけると、優馬はすぐに目を逸らした。
学年一のイケメンモテ男が、何でそんなにガリガリに痩せこけて貧相な顔になってしまったのか気になるが、そのタイミングで店員が飲み物と料理を運んできたので、話が遮られる。
そしてそれ以降、最後まで優馬が話に加わってくることはなかった。
こんな感じでどうでしょうか。
この流れで、2ページ以降を読んでみてください。
複数のキャラを同時に出すときは、今読んでいる場所が、どのキャラについて書かれているのかが、読者に分かるように意識してください。
(*´∀`)ノ■はい、チョコ
https://estar.jp/novels/25868583/viewer?page=2
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